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Day 381-390/Day 381

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Day 381



Day 381



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 “三百八十一日目”

 新大陸について来る前にある程度は調べたが、俺達が知る事が出来た情報は少ない。

 積み重ねてきた歴史、この地独特の文化や風習。周囲の地理と厳しい自然、何より美味なる食材など、まだまだ知らない事の方が圧倒的に多い。

 特に食材について知らないのは問題である。

 美味しい食材の探求は大きな目的の一つなのだから、迅速に集めるべきだ。

 もちろん、ここで生きる人々の情勢など調べなければならない情報と一緒に。


 と言う事で、実は昨夜のうちに分体を複数放ち、色々と調べてみた。

 時間的に集められた情報はやや少ないが、大体以下のようになる。


 まず、近くにある港湾都市は交易都市国家≪ムシュラム・ジャンナ≫と言うようだ。

 俺達が居た別の大陸との交易だけでなく、他の都市国家を繋ぐ要所に存在し、新大陸有数の巨大河川≪ガンジナムス大河≫が都市中央を通って大海に繋がっている為、広範囲まで交易が行われている事で発展した。

 人口も数十万人やそれ以上だとも言われるほど多く、新大陸では重要な都市国家の一つとして数えられ、そこそこ長い歴史がある。


 そして新大陸は気温は高いが湿度は低く、乾燥した大地が広がっているらしい。

 広大な大地の半分近くを占める砂漠地帯は昼と夜の温度差が激しく、過酷な環境に適応したモンスターが昼夜問わず襲いかかってくる危険地帯だそうだ。

 しかしそれでもここで暮らしている人々は逞しく、各地に点在する安全地帯(オアシス)を中心に都市国家や集落を築いている。

 新大陸には都市国家で暮らしている者以外にも氏族単位、部族単位で各地を放浪したりしながら暮らしている者も多くいるようだ。


 また昔から数少ない安全地帯の争奪戦が激しく続いているからか、血には血を、報復には報復を、という殺伐とした文化などもあるようだ。

 略奪が日常にあり、犯罪も多い。そしてそれをねじ伏せる剛の者もまた多い。

 争いが身近な為、個の戦闘能力と言う点で見れば新大陸はかなり良質だろう。

 それ故か、単純な力、というのは敬われるステータスらしかった。それぞれの正義を貫くには最低限の力が必要になる訳だ。


 一先ず、ざっと調べた感じではこうなった。


 これ以上は実際に見聞きした方が早いと判断し、誰も俺達の事は知らないだろうが、用心の為ちょっと変装してから行く事にした。


 変装は、まず銀腕の一対の形状を変化させて和風の全身甲冑とする。部分部分で色を変えて装飾にもちょっと拘りつつ、そこそこ大きめの黒い外套(コート)を羽織る。

 頭部は鬼角が邪魔になるので兜を装備しないが、思い付きで自家製布で造ったシュマグで首元を包んでみた。微妙な組み合わせかと思ったが、案外似合うらしい。

 砂避けのマスクなど様々な事に代用できるシュマグはいざという時には役立ってくれるだろう。


 甲冑が出来た後は、腰に鍛冶師さんが造ってくれた二振りの鬼哭刀を佩く。

 闇精石と魔法金属と銀腕の合金を鍛えた黒い鬼哭刀は【童子切黒綱】、光精石と魔法金属と銀腕の合金を鍛えた白い鬼哭刀は【鬼哭丸白夜】と銘がついている。

 天下五剣を参考にした銘だが、本家の伝来が鬼に関連しているからか何となく親近感が湧いてくる。

 それに普段の得物である槍とは勝手が違うものの、鬼哭刀を訓練で使ってみると、銀腕を素材の一つとして使用しているからか手に良く馴染んだ。

 刀身は銀腕の特性によってある程度形状変化する事も可能で、変幻自在な斬撃を繰り出す事が出来る。

 手の延長線上のような感覚で戦えるし、偶にはこういったスタイルでやるのも悪くは無いだろう。


 と言う具合に、全体的には鎧武者という格好になる訳だが、高温で砂漠地帯の多い新大陸では金属製の全身鎧など中身が蒸し焼きになりたいのかとも思うような武装である。

 他人視点で見れば、ちょっと頭が大丈夫かと思う具合には環境に適していない。革鎧とか、部分的な金属鎧なら問題なさそうな感じだろうか。

 一応【温度調節】などがついているマジックアイテムは結構あるので、そういった類のマジックアイテムだと解釈してくれるだろう。

 そう思われなかったとしても別に死ぬわけではないので、そこまで気にしなくてもいいとは思うのだが。


 ともあれ、俺のように他の皆も普段とは装いの違う、やや新大陸風の新ファッションに着替える事になった。

 こうして衣装を変えるのも、旅の醍醐味かもしれない。


 変装を終えて準備が整うと、夜明けと共にやって来た新大陸の攻略者の乗る船舶に入れ替わりで乗り込んで、ゆっくりと波に揺られながら≪ムシュラム・ジャンナ≫に向かった。


 ちなみに今回は大きなミノ吉くんとアス江ちゃんは留守番で、その他は希望者だけである。

 まあ、ほとんど全員が行く事を希望していたが。


 何だかんだと小舟で揺られながら、数百隻以上はありそうな船が犇めく≪ムシュラム・ジャンナ≫の巨大な港に到着すると、久しぶりに大地に足をつける事になった。

 元々大波が来てもほとんど揺れは感じなかったので感覚的にはあまり変わらないのだが、やはり落ち着くと言えばいいのだろうか。

 オーロやアルジェントなどはどこか嬉しそうにしていた。


 そのまま目的もなく適当に歩いていると、朝早くから大きな広場で賑やかな市場が開かれているのを見つけた。

 移動の出来る屋台が数十数百と集まった市場に興味を引かれたので寄ってみれば、流石は新大陸と言う所だろうか。

 屋台には見た事もないような商品が多く並んでいる。


 奇妙な色合いと形状の野菜。大きなトカゲ型モンスターの生肉。六十センチほどの蛇型モンスターが一匹丸々入った酒瓶。見た事も無い不細工な魚。

 やや刃毀れした黄色い曲剣。血の痕の残る古びた革鎧。砂避けの外套。大量の水を入れられる革の水筒。

 鉄板の上で焼かれた肉料理。新鮮な大魚一匹を捌いた魚料理。果物に飴のような何かを塗った菓子。

 その他にも様々なモノが売られている。


 ふむ。こういう市場にこそ掘り出し物がありそうだ。

 そう思いつつ、俺は反射的に人混みに紛れてぶつかって来たスリの利き手を握り潰す。

 普通なら激痛で気がつく筈だが、握り潰したのが速過ぎた事と、同時に【蛇毒投与(ヴェノム)】による即効性の神経毒で感覚を奪ったからか、スリは気づかずそのまましばらく走り、路地裏に消えていった。

 そして喧騒の中で僅かに聞こえる悲鳴。どうやら気が付いたらしい。

 反射的にやった事なので、恐らく普通に治療するのは難しい状態になっているだろう。

 ちょっとだけやり過ぎたかなと思いつつ、今の俺のようなかなり厳つい甲冑姿を見ても物怖じしない姿勢はある意味感心する。

 それだけ金持ちだと思っているのかもしれないが、バレた時の危険は考えないのだろうか? とも思うが、まあ、どうでもいい事だ。

 狙う相手を間違えた、因果応報だと諦めてもらうしかない。


 スリが貧困に喘ぐ孤児とかならもう少し考えるが、いい大人だったので、この事はすぐに忘れるのだった。

 スリの今後よりも、地酒の方が大切なのだから仕方ない。

 そこらで売っていた安物の地酒をグビリグビリ。安酒なので美味しくはないが、これまでと違った風味がする。

 味はそこそこ。温いのはちょっと残念なので、他に良い酒は無いかと探索を続けるのだった。




Day 380 == Day 381 == Day 382


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